労務ニュース スマイル新聞

2018年8月23日 木曜日

平成30年8月23日第464号

『改正民法』について(相続が変わる?!)


相続分野の規定を約40年ぶりに見直す改正民法など関連法が7月6日に成立しました。

1.配偶者居住権の創設(公布日から2年以内の施行)
住宅の権利を「所有権」と「居住権」に分割し、配偶者は居住権を取得すれば所有権が別の相続人や第三者になっても住み続けることが出来るようになりました。
この権利を公示するため「配偶者居住権」の登記制度を設け、建物の所有者は配偶者に対し登記義務を負うことになりました。
また、相続開始時に無償で居住していた場合、遺産分割協議が終了するまでか相続開始から6ヵ月のいずれか遅い日まで無償で住める「配偶者短期居住権」も設けました。
なお、被相続人が居住建物を配偶者以外の者(夫と長男など)と共有していた場合には配偶者居住権が発生しませんので、注意が必要です。

2.婚姻20年以上の配偶者の優遇策(公布日から1年以内の施行)
婚姻20年以上の夫婦で配偶者が生前贈与や遺言で譲り受けた住居は「遺産とみなさない」という意思表示があったとして遺産分割の対象財産から除外することになります。

3.自筆証書遺言の見直し
(1)財産目録については、パソコンで作成しても良いことになりました。(公布日から6ヵ月以内の施行)
(2)法務局が自筆証書遺言を保管する制度を作りました。この制度を利用した遺言書の検認は不要です。(公布日から2年以内の施行)

4.特別寄与者制度の創設(公布日から1年以内の施行)
相続権のない6親等内の血族と3親等内の配偶者が介護などに尽力した場合に、相続人に金銭を請求することが出来る制度を設けました。(事実婚、内縁等は除く)

5.金融機関における「仮払い制度」の創設(公布日から1年以内の施行)
遺産分割協議が終わる前に生活費や葬儀費用の支払いなどのために被相続人の預貯金を金融機関から引き出すことが出来る「仮払い制度」を創設しました。
仮払いをすることが出来るのは「被相続人の預貯金額×1/3×法定相続分」としますが、別途、法務省令で一行あたりの上限額について定めを設ける予定です。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2018年8月 8日 水曜日

平成30年8月8日第463号

日本型司法取引について


改正刑事訴訟法の「司法取引」制度が、2018年6月1日から施行されました。事件解決に向け重要な供述を得るために活用される司法取引は、欧米諸国で広く採用されていますが、日本で導入される「司法取引」制度とは、どのようなものなのでしょうか。

1.司法取引とは
「司法取引」制度は、特定の財政経済犯罪及び薬物銃器犯罪(法第350条の2第2項各号の「特定犯罪」)について、検察官と被疑者・被告人が、弁護人の同意がある場合に、被疑者・被告人が、共犯者等他人の刑事事件の解明に資する供述をし、証拠を提出するなどの協力行為を行い、検察官が、その協力行為の見返りに、被疑者・被告人に有利に考慮し、これを不起訴にしたり、軽い罪で起訴したり、軽い求刑をするなどを内容とする「合意」ができるとし、このような両当事者間の協議・合意を通じて、他人の犯罪行為の訴追・処罰に必要な供述証拠等を獲得しようとするものです(法第350条の2以下)。

2.メリット
 ・被疑者らから真実を引き出すことができるのであれば真相解明に有効である。
 ・供述者の協力が得られるから、事件の迅速な処理を図ることができ、費用、時間と労力の節約になる。
・他人の犯罪に関する動機などの証拠が不十分な場合、確実な証拠を持っている者の刑を減免する約束で供述を得ると、他人の犯罪の発見が高められ、より重要な犯罪の捜査に役立つ情報が得られる。
・捜査機関が、被疑者・被告人の刑事処分に手心を加える代わりに、他人の犯罪を聞き出すことが容易になり、組織的犯罪等の解明に威力を発揮することが期待できる。
・密行性の高い組織的犯罪等について、首謀者や背後者などのような真に処罰すべき者を処罰することができる。

3.デメリット
・虚偽供述の可能性による冤罪が危惧される。(司法取引は、冤罪を惹き起こしやすい)
・被疑者・被告人が重罰を避けるため、あるいは自分の罪を軽くするために司法取引を行い、関係のない他人を巻き込んだり、犯罪の役割の軽い者に罪をなすりつけるように偽証したりする可能性がある。
・捜査機関は協力を取り付けようとし、他方、被疑者・被告人は特典の付与を期待するため、利害が一致しやすく、虚偽供述が一層起きやすくなることが懸念される。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

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