労務ニュース スマイル新聞

2018年3月23日 金曜日

平成30年3月23日第454号

民法改正による保証債務の変更


1.保証契約について

民法改正(2020年4月1日施行)によって、保証契約に大きな変更があります。
例えば、不動産賃貸をしている方であれば、借主が家賃を滞納した場合のために保証人
をたててもらうのが通常です。
このとき、多くの場合「根保証契約」をしています。
このような根保証契約の典型は、銀行と事業者との貸金取引など継続的な取引契約が
結ばれる場合です。この根保証契約は、例えば、100万円借りる際に保証人になった
ところ、その後追加で借りた1000万円まで責任を負うことを知ってトラブルになっ
てきたというような経緯があります。
そこで、平成16年の民法改正では、こういった貸金等根保証契約について保証人保
護のための規定が設けられました。
しかし、不動産の賃貸借から生じる賃借人の賃料債務の保証に関する「根保証契約」
については規定がなく、トラブルになる事例もありました。
(雇用契約における身元保証も、一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とするので、根保証契約に当たりますが、身元保証については、昭和8年に身元保証に関する法律が制定されています)
それでは、実務への影響が大きいと思われる改正部分について見ていきましょう。

2 個人根保証における極度額の設定義務

改正法により、極度額を書面で定めなければ、その効力を生じないとされます(新法第465条の2以下)。
「極度額」とは、保証人が負う責任の上限額のことです。
個人根保証契約の場合は、この極度額を、書面で定めなければ、契約自体が無効とな
ってしまいます(保証会社のような法人であれば大丈夫です)。
この書面は、公正証書である必要はなく、契約書で足ります。
つまり、改正後は、賃貸借契約において賃借人の親族などの個人に根保証を求める場
合には、契約書の中で極度額を定めておかなければならないということになります。
この極度額は、一定の金額を定めておく方法や、賃料の2か月分といった定めであっ
ても、賃料の額が特定されていて上限額を確定できるのであれば有効です。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2018年3月 8日 木曜日

平成30年3月8日第453号

労働生産性の国際比較からみる働き方改革


1.働き方改革
  「働き方改革」という言葉を聞かない日がないほどニュースなどで見聞きするようになりました。政府によれば、「働き方改革こそが、労働生産性を改善させるための最良の手段である。」としています(平成29年3月28日付、働き方改革実行計画より)。労働生産性を向上させることによって、企業は収益力を向上させ、労働者はその収益の分配を受けることにより所得の拡大、ワークライフバランスの実現ができ、日本の経済成長が達成される好循環が期待されているのです。
2.労働生産性の国際比較
  日本は、国際的に労働生産性が低いと言われますが、では労働生産性とはどのようなものなのでしょうか。
  労働生産性は、一般に就業者1人当たり、あるいは就業1時間当たりの成果(GDP)で比較されます。労働生産性=GDP/就業者数(または就業者数×労働時間)
  公益財団法人日本生産性本部の発表によると、平成28年の日本の就業者1人当たりの労働生産性はOECD加盟35ヵ国中21位で米国の概ね2/3程度の水準です。詳しくみると、上位の国には法人税を下げることで多国籍企業の本社機能を自国に移転させた結果GDPを押し上げている例もあり、外国の労働者が日本の労働者よりも効率的に働いているとは一概に言えない部分はありますが、このまま何も手を打たなくてもよいとは決して言えないでしょう。
3.今後の課題
 労働生産性を向上させるためには、上の式からわかるように分母のGDPを上げるか分子を小さくすることしかありません。日本のGDPは最近20年ほとんど拡大していませんから、まず分子を小さくする方策として政府が労働時間法制の改革に着手しているというのは理解できます。
 しかしながら、前述の発表では分母を小さくするための業務効率化はある程度までいくと改善が難しくなると指摘しています。労働力を小さくしながら今までと同様の成果を生み出して生産性を上げ続けようとしても限度があるからです。そうだとすれば、今後は分子拡大のためのイノベーションがやはり必要となってくるでしょう。
 これを企業単位でみると、効率的な労働時間制度の導入や無駄を削減するための業務改善は必要ですが、それよりも新しい製品やサービスを生み出しやすい人事制度や企業風土の醸成にもっと注力すべきではないでしょうか。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

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