労務ニュース スマイル新聞

2016年11月23日 水曜日

平成28年11月23日第422号

法定相続情報証明制度(仮称)について


法務省は7月5日、相続手続を簡素化する「法定相続情報証明制度(仮称)を来年
度に新設する。」と発表しました。一体、どのような制度なのでしょう?

1.新設の目的
法務省の発表によりますと「相続登記が未了のまま放置されることは、いわゆる所
有者不明の土地問題や空き家問題を生じさせる大きな要因の一つであるとされてい
ます。(中略)そこで、法務省民事局では相続登記を促進するための新たな制度と
して当該制度を新設することとしました。」と、されています。

2.現状と問題点
(1)相続人は、遺産に係る相続手続に際し、登記所や金融機関に対して、被相続
人が生まれてから亡くなるまでの戸籍及び相続人全員の戸籍等の関係書類等一式を
揃えて、同じ書類を管轄の異なる登記所や各金融機関にそれぞれ提出しなければな
らず、煩雑で手間がかかっています。
(2)金融機関等においては、そもそも戸籍関係書類等一式を読み解いて相続人を
特定することや、書類が足りない場合に追加書類の提出を相続人に求めることなど
に多くの手間がかかっており、しかもこれらは1人の被相続人に対して複数の金融
機関等で重複して行われているため、膨大な社会的コストが発生しています。

3.新制度のあらまし
(1)相続人が登記所に対し、次の書類を提出します。
(ア)被相続人が生まれてから亡くなるまでの戸籍関係書類等
(イ)上記(ア)の記載に基づく法定相続情報(被相続人の氏名・本籍・住所・生
年月日・死亡年月日と相続人の氏名・本籍・住所・生年月日・続柄・法定相続分)
を記した関係図である申請書
(2)登記官が(1)の内容を確認し、証明文付きの法定相続情報の写しを交付し
ます。
(3)相続財産たる不動産に管轄登記所が異なるものがある場合、上記の写しを添
付すれば相続登記の申請が可能となります。
(4)被相続人名義の預金の払い戻し等、他の相続手続に使うことも可能とします。

4.今後の見通し
法務省の発表によれば「年内にパブリックコメント(意見公募)を実施して、詳細
を決めたうえ、来年5月の開始を目指す」ということです。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2016年11月 8日 火曜日

平成28年11月8日第421号

労働条件の相違の不合理性の判断基準

 ハマキョウレックス事件は、一般貨物自動車運送事業Y社に勤務する契約社員
(配送ドライバー)のXが、XとY社との間には、期間の定めのない労働契約が
成立している、また、仮に成立していないとしても、正社員と契約社員たるXと
の労働条件を比較すると、不合理な相違があると主張した事案です。

1.争点
 1)Xに期間の定めがない労働契約が成立しているか
  第1審、控訴審においては、採用の面接時、Xに対して半年、あるいは1年
後には正社員に登用する可能性があることを示唆した事実が認定されましたが、
入社時の契約書にはその旨の合意はなく、XのY社の正社員としての労働契約の
合意の事実を否定しました。
 2)労働契約法第20条(以下、「労契法」という)についての考え方
  ⅰ)第1審の判断
正社員と契約社員の業務自体に大きな相違は認められないが、正社員は、業務の
必要性に応じて業務内容や就業場所の変更命令を甘受しなければならず、管理責
任者等のY社の中核を担う人材として登用される可能性がある一方、契約社員は、
業務内容、労働時間、休憩時間、休日等の労働条件の変更がありうるにとどまり、
管理責任者等Y社の中核を担う人材として登用される可能性がある者として育成
されるべき立場にあるとは言えないとして、労契法第20条違反とは判断しませ
んでした。
  ⅱ)控訴審の判断
有期労働契約と無期労働契約との間の労働条件が単に相違するとういうだけで、
労契法第20条の適用があるものではなく、両者の労働条件の違いが「期間の定
めの有無に関連して生じたものであることを要する趣旨である」としました。
   労契法第20条に照らして不合理と認められるかどうかは、
(1)「労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度」、
(2)「当該職務の内容及び配置の変更の範囲」と
(3)「その他の事情」を考慮要素として、「個々の労働条件ごとに判断される
べきものであると解される」として、1つひとつの労働条件ごとに、労働条件の
相違と言えるかどうかを検討するとの考え方を示しました。

2.不合理性の判断
 上記(1)~(3)は、一定の「要件」としてではなく、判断する「要素」と
して位置付けられており、これらに照らして総合的に判断するという手法をとっ
ており、「同一」か否かまで厳正な判断はしておらず、弾力的な判断ができる
ようにしています。

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

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