労務ニュース スマイル新聞

2015年11月23日 月曜日

平成27年11月23日第398号

打ち切り補償による解雇(地位確認等反訴請求控訴)事件

 本件は、業務上疾病により休職中で労災保険給付(療養補償給付・休業補償給付)を受けている従業員(X 男性)に対し、勤務先(Y)が労働基準法81条に基づき平均賃金の1200日分相当額の打切補償を支払って行った解雇について、解雇は無効であるとして、労働契約上の地位確認請求が認容されたことについての反訴です。

1.東京地裁、東京高裁の判決
 Xは平成14年ごろから首や腕に痛みが生じて頸肩腕症候群と診断され、平成19年に労災認定を受け休職した。Yは平成23年に打ち切り補償約1629万円を支払いXを解雇。X側が地位確認を求めて提訴した。一審(東京地裁)は「打ち切り補償の適用は、使用者による療養補償(労災給付ではない)を受けている場合に限られる」とし、解雇無効と判断。二審(東京高裁)も支持していた。

2.争点は?
 労働基準法は業務上のケガや病気で療養中及びその後30日間の解雇を禁止しているが、使用者が療養費を負担し3年が過ぎても治らない場合、平均賃金1200日分の「打ち切り補償」を支払って解雇できると規定している。
 一、二審の判決の結論が維持されたまま確定すれば、使用者が労災保険料を負担して労災給付を行っても打切補償の規定を適用した解雇ができないことになることから、実務に大きな影響を及ぼすものと注目されていた。

3.最高裁判決
 最高裁は、平成27年6月、「労災保険が給付されている場合、労働基準法が使用者の義務とする災害補償は実質的に行われているといえる」という拡張説を明らかにした。4人の裁判官の全員一致で「療養開始後3年が過ぎても治らない場合、打ち切り補償の支払いで解雇できる」という初判断を示し、高裁への差戻し判決が出た。

 近年、メンタルへルス疾患により長期間休職を行う労働者が増加しています。
 このたび打切補償を支払ってなす解雇有効判断がありましたが、一方、療養中なのに解雇されてしまう労働者の保護とどう調整するのか、今後の動向にも注目です。
 詳細は、学校法人専修大学(地位確認等反訴請求控訴)事件をご一読ください。
(スマイルグループ 社会保険労務士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2015年11月 8日 日曜日

平成27年11月8日第397号

被用者年金制度の一元化について

 「社会保障と税の一体改革大綱について」(平成27年2月17日に閣議決定)を踏まえ、平成27年10月1日「被用者年金一元化法」が施行されました。

 民間サラリーマンに適用されていた厚生年金保険が、公務員及び私学教職員にも適用されます。今回の一元化のポイントは、かつての国鉄や電電公社の厚生年金への統合とは異なり、各共済年金機関が実施機関となることです。つまり、被保険者資格の管理、保険料の徴収、年金額の決定、年金支払い等は、種別ごとに各実施機関が行い、厚生年金法を改正し適用することにより一元化されました。

1.一元化後の被保険者の種別
            (従来の被保険者ごとに種別名称がつけられました。)
(1)第1号厚生年金被保険者:従来の厚生年金被保険者
                            (実施機関:厚生労働大臣)
(2)第2号厚生年金被保険者:国家公務員共済組合の被保険者
                                 (国家公務員共済)
(3)第3号厚生年金被保険者:地方公務員共済組合の被保険者
                                 (地方公務員共済)
(4)第4号厚生年金被保険者:私学共済制度の加入者
                            (日本私学振興共済事業団)

2.共済年金と厚生年金の制度の相違点の解消
 両制度の差異を解消するため、内容により共済年金と厚生年金制度のどちらか
の規定が適用されます。主な概略は次の通りです。
(1)共済年金の制度が、厚生年金にも適用されるもの
  ア 被保険者期間の計算 
   厚生年金の資格を得喪し、同月内に国民年金の資格を取得した場合、従来
  は両方の保険料の負担が必要でしたが、国民年金のみの負担となります。
  イ 在職老齢年金の期間
   在職老齢年金は、資格喪失の月まで被保険者でしたが、退職した月まで在
  職老齢年金となり、月末退職の場合でも翌月から年金の支給停止が発生しな
  くなりました。
  ウ 資格喪失時の年金額改定
   従来は資格喪失日から起算して1ヵ月を経過した日の属する月から年金額
  が改訂されていましたが、退職した日から起算され月末退職時の遅れが解消
  されます。

(2)厚生年金の制度が、共済年金にも適用されるもの
  ア 未支給年金の支給範囲
   厚生年金の支給範囲の他に相続人があった場合でも、厚生年金の規定とな
  ります。
  イ 在職老齢年金:激変緩和措置への配慮
   退職共済年金受給者が厚生年金被保険者となった場合、従来は別制度のた
  め、賃金+年金が47万円を超えた場合の支給停止でしたが、28万円超に
  緩和されます。

(スマイルグループ 社会保険労務士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2015年11月 5日 木曜日

平成27年10月23日第396号

代襲相続

 相続が開始する以前に推定相続人が死亡・欠格・廃除などによって相続権を失った場合に、その者の直系卑属がその者に代わって同一順位で相続人となることをいいます。これは、直系卑属の期待権を保護するのが公平という考えに基づくものとされています。

1.被代襲者
 被代襲者は、被相続人の子及び兄弟姉妹で、被相続人の直系尊属及び配偶者は被代襲者とはなりません。
 
2.代襲相続人「子の代襲相続の場合」
(1)代襲相続人の限定
  代襲相続人は「被代襲者である子」の直系卑属(被相続人の孫・ひ孫など)また
 は「被代襲者である兄弟姉妹」の子(被相続人の甥・姪)に限ります。
(2)子についての代襲相続
  代襲相続人は、相続権を失った者の子であるとともに、被相続人の直系卑属で
 なければなりません。そのため、養子縁組前に生まれた養子の子は代襲相続人
 とはなりません。
(3)兄弟姉妹についての代襲相続
  代襲相続人は、相続権を失った者の子であると同時に、被相続人の血族(傍系
 卑属)であることを要します。養子の縁組前の子は養子を代襲して養親の他の
 子の遺産を代襲相続することができません。
(4)その他
  代襲相続人は、被代襲者が相続権を失ったときに存在している必要はなく、相
 続開始時に存在していればよいとされています。

3.代襲原因
 代襲原因は、被代襲者が相続開始以前に死亡(失踪宣告を受けた場合や同時死亡の推定の場合を含みます)しているとき・相続欠格・相続人の廃除の3つの場合とされており、相続放棄は代襲原因とはなりません。

4.代襲相続人の地位
 代襲相続人は、被代襲者に予定されていたのと同一の順序で、被代襲者に相当する相続分を相続します。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2015年11月 5日 木曜日

平成27年10月8日第395号

労働者派遣法改正

 派遣労働という働き方は、 臨時的なものであるという考え方のもと、常用代替を防止し、派遣労働者の雇用の安定とキャリアアップを図るため、平成27年9月30日から労働者派遣法が改正施行されました。

1.派遣労働者と派遣先社員の均衡待遇の推進
 派遣先は、派遣労働者と派遣先で同種の業務に従事する労働者の待遇の均衡を図るため、次の点で配慮義務が課され、具体的な行動を行う必要があります。
(1)派遣元事業主に対し派遣先の労働者に関する賃金水準の情報提供等を行う
 こと
(2)業務に密接した教育訓練を実施する場合は、派遣労働者にも実施すること
(3)派遣先の労働者が利用する福利厚生施設利用の機会を派遣労働者にも与え
 ること

2.期間制限のルールが変わります
 現在の期間制限を見直し、施行日以後に締結・更新される労働者派遣契約は、全ての業務に対して、派遣期間に次の2種類の制限が適用されます。
(1)同一の派遣先の事業所において、労働者派遣の受入れを行うことができる期
 間は原則3年が限度となります。  
※派遣先が3年を超えて受け入れようとする場合は、派遣先の過半数労働組合等からの意見を1ヵ月前までに聴く必要があります。
(2)同一の派遣労働者を、派遣先の事業所における同一の組織単位において 受
 け入れることができる期間は、原則3年が限度となります。

3.労働契約申込みなし制度
 平成27年10月1日から、労働契約申込みなし制度が施行されます。派遣先が次に掲げる違法派遣を受け入れた場合、派遣先は派遣労働者に対し派遣元と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなされます。
(1)労働者派遣の禁止業務に従事させた場合
(2)無許可の事業主から労働者派遣を受け入れた場合
(3)派遣可能期間を超えて労働者派遣を受け入れた場合
(4)いわゆる偽装請負の場合

 施行日時点ですでに締結されている労働者派遣契約については、その労働者派遣契約が終了するまで、改正前の法律の期間制限が適用されます。しかし、申込みなし制度適用のリスクを完全に排除するためには、専門26業務など、期間制限違反を主張されるおそれがある場合は、10月1日時点で新法適用に切り替え、また、継続している労働者派遣個別契約は、派遣会社と合意の上9月29日で終了し派遣期間を9月30日開始とする労働者派遣個別契約を締結し、申し込みなし制度の適用を受けないよう締結日は平成27年9月30日と記載する必要があります。

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