労務ニュース スマイル新聞

2009年9月23日 水曜日

平成21年9月23日(第250号)...健康保険の改正について



1. 平成21年9月からの変更項目
昨年の10月から政府管掌健康保険は全国健康保険協会が運営していくことになり、各都道府県に支部を置き、その地域の実情に応じたサービスが展開されることとなりました。それに伴い、平成21年9月までに都道府県毎の保険料を決定すると健康保険法が改正され、今まで全国一律(8.2%)であった保険料が、この9月より地域によって変更されています。これに伴いお給料からの控除額が変わりますので注意ください。
9月分の保険料を当月のお給料から控除するのか、翌月のお給料から控除するのかで変更する時期が変わりますが、それは御社のルールを確認し、変更をお願いします。原則は翌月控除です。
次に近畿各県の保険料をお伝えします。

 滋賀県 8.18%   京都府 8.19%   大阪府 8.22%
 兵庫県 8.20%   奈良県 8.21%   和歌山 8.21%

2. 平成21年10月からの変更項目
この10月より、緊急少子化対策として出産育児一時金が4万円増額され、42万円になります。今までは出産育児一時金として35万円に産科医療補償責任保険料として3万円の合計38万円が支給されていました。それがこの10月から平成23年3月までの暫定措置として42万円の支給となります。ただし、子育て支援を、より前面に出している民主党が政権を取りましたので、期間が延長されるなり、給付額が増えるなどの措置が取られるかもしれません。

※産科医療補償責任保険制度とは、出産時の事故により重度の脳性まひになったケースに
支払われる保険料です。支給対象となる赤ちゃんは、妊娠33週以降に体重2,000g以上で誕生して脳性まひになった子とされています。従いまして、次のケースは補償の対象となりません。
(1)色体異常などの先天的な要因
(2)妊娠33週未満や体重2000g未満で誕生した子
(3)産科医療補償責任保険に加入していない施設で出産した子
(しかし、病院、診療所、助産院で加入していない施設は皆無です。)
(スマイルグループ 社会保険労務士)

投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL

2009年9月 8日 火曜日

平成21年9月8日(第249号)...会社都合の休業と賃金請求権



最近の雇用環境状況下で、会社都合の休業に基づき「休業手当」の支払いが発生しているところが散見されます。労使間のトラブル回避のためにも、ここで通達・判例を紹介しながら問題点を解説いたします。

【労働基準法第26条(休業手当)】
使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当
該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当を支払わなければならない。
【民法第536条(債務者の危険負担)】
(1)前2条(第534条、第535条)に規定する場合を除き、当事者双方の責めに
帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、
債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
 (2)債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき
は、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務
を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。

1.労働基準法第26条、民法第536条、使用者の「責めに帰すべき事由」の関係
労基法第26条の「使用者の責に帰すべき事由(帰責事由)」とは、天災事変などの不可抗力に該当しない限り、帰責事由はあると解されています。したがって、雇用調整のための一時帰休や原材料の欠乏、流通機構の不円滑による資材入手難で休業した場合など、労基法第26条「休業手当」の支払いが必要となります。
ここで問題になるのは民法第536条第2項「債務者の危険負担」の規定により100%の保障をする必要があるのではないかということです。
 通説的見解では、両条文の「使用者の責に帰すべき事由(帰責事由)」の範囲が違うことがあげられています(『民法の場合』=「故意・過失または信義則上これと同視すべき事由」とあり、『労基法の場合』=「民法より広い概念で、不可抗力以外の経営障害事由を含める」とあります)。
 例えば、親会社の経営難から下請工場が資材資金を獲得できず休業した場合は、不可抗力とはいえず労基法の「休業手当」の支払い要件に該当しますが、資材資金の獲得ができず休業した理由が使用者側の原因に基づかない場合、民法の「危険負担」の要件である債権者の責めに帰すべき事由には該当しないといえます。

ここで注意すべきことは、不況を理由とした生産調整のための休業の多くは民法第536条第2項の債権者(使用者)の責めに帰すべき事由に該当する休業であると考えられることです。

通達(昭22.12.15 基発第502号)では、労基法第26条の休業手当は、民法の一般原則が労働者の最低生活保障について不十分である事実に鑑み、強行法規で平均賃金の100分の60まで保障せんとする趣旨の規定であって、民法第536条第2項の規定を排除するものでないとあります。


また判決のなかには、使用者の民事上の支払義務を減額する趣旨でないため、一時帰休の際の賃金保障につき、民法第536条第2項に基づき100%の賃金支払いを認めている事件(池貝事件、横浜地裁判決 平12.12.14 労判第802号)もあります。労働者側は、休業手当が支給されている場合、賃金全額との差額を請求できることになります。

回避する手段としては、民法第536条は任意規定と理解されているため、個別の特約(当事者間の合意)がある場合は、強行法規である休業手当分の保障で可能です。よって、休業手当のルールを、就業規則にあらかじめ定めていた場合だけでは弱く、労働協約、労働契約等で労基法に反しない形で定める必要があります。

2.一時帰休中、アルバイトで得た賃金控除
前述の通り、一時帰休を命じた場合、使用者の責に帰すべき事由に基づき「休業手当(平均賃金の100分の60以上)」の支払いが必要となります。

労働者が、休業手当の支給を受けながらこの一時帰休中にアルバイトをし、別途収入を得た場合は、賃金の二重取りとなります。このような場合は、既に協定等において、一時帰休期間中に他で働いて得た収入の取扱いについて、取り決めがあればそれによることになります。
協定等に特段の取り決めがない場合、民法第536条第2項後段の「自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない」となります。

この取り扱いについては、解雇事案ですが、駐留軍山田部隊事件(昭37.7.20最高裁第二小法廷判決)の判決のなかで、「労働者は労働日の全時間を通じ使用者に対する勤務に服すべき義務を負うものであるから、使用者の責に帰すべき事由によって解雇された労働者が解雇期間内に他の職について利益を得た時は、右の利益が副業的なものであって解雇がなくても当然取得できるなど特段の事情のない限り、民法第536条第2項但書に基づき、これを使用者に償還すべきものとするのを相当とする」としています。と同時に、その控除限度額は、「労基法第26条の趣旨に照らし、その減額は100分の40までを限度とする」とあります。

3.結論
(1)会社の一時帰休期間中に支払う休業手当が平均賃金の100分の60である場合、
控除することはできません。
(2)支払う休業手当が平均賃金の100分の60を超える場合、超えた額を控除するこ
とが可能です。その場合の限度は、100分の100支払っていた場合、100分の
40となります。

民法第536条第2項と違い労基法第26条は、休業手当(平均賃金の100分の60)の減額を認めていません。よって、(100分の60については)控除することは許されません。
                       (スマイルグループ 社会保険労務士)          


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