労務ニュース スマイル新聞
2006年12月23日 土曜日
平成18年12月23日(第184号)...平成19年度の税制改正大綱
12月15日に平成19年度税制改正大綱が決定されました。主なものは、次のとおりです。
1.減価償却制度の見直し
平成19年4月1日以降取得する減価償却資産について、一度に償却できる金額が上がります。例えば耐用年数5年の場合、定額法の償却率は0.18(0.9×0.2)、定率法の償却率は0.369ですが、改正後の定額法は0.2に、定率法は0.5になるため、減価償却費が従前より多く計算されます。
また償却可能限度額も今までは取得価額の5%までが上限でしたが、今後は1円まで償却することが可能となります。つまり、100万円のものなら今までは95万円までしか経費にならなかったのですが、改正後は999,999円までを経費とすることができます。
2.留保金課税制度の適用除外
多額の利益を出している会社が配当などをせずに内部留保していると上乗せで税金が取られてしまう留保金課税について、資本金1億円以下の会社は適用から除外されます。平成19年4月1日以降開始事業年度から適用されます。
3.特殊支配同族会社
特殊支配同族会社に係る役員給与損金不算入制度について、適用除外基準である基準所得金額を800万円から1,600万円に引き上げます。現行では主催役員給与控除前の会社利益が800万円という基準でしたが、改正後は倍の1,600万円となります。平成19年4月1日以降開始事業年度から適用されます。
4.ファイナンス・リース
賃貸借取引とされている所有権移転外ファイナンス・リース取引について、全て売買取引とされます。今まで支払時にリース料と経理するだけだったものを、リース開始時にリース物件を購入したものとして資産計上し、減価償却費を計算する必要があります。平成20年4月1日以降に締結するリース取引から適用されます。
5.相続時精算課税制度
中小オーナー経営者が自社株式を子供に贈与(一定の要件を満たす場合)する際の相続時精算課税制度につき、贈与者の年齢要件を60歳に引き下げ、非課税枠が3,000万円になります。 (スマイルグループ 税務担当)
投稿者 イケダ労務管理事務所 | 記事URL
2006年12月 8日 金曜日
平成18年12月8日(第183号)...安全配慮義務
「安全配慮義務」と似たものに「善管注意義務」という義務があります。しかし、「安全配慮義務」は「善管注意義務」と似てはいるものの、内容はずっと厳しいものです。
事業者は労働者(公務員を含む)の生命、身体、健康の安全を保護すべき法的な義務がある、というのがいわゆる「安全配慮義務」です。メンタルヘルスの分野でも、電通の過労自殺裁判で明示されています。これに違反して労働者の生命、身体、健康の安全を損なえば損害賠償ということになります。しかも最高裁は「危険が予見可能である限りは、事業主は具体的な結果を回避する措置を講じなければならない義務」までも求めています。これは事故だけでなく病気もあてはまります。判例を見てみましょう。
大石塗装・鹿島建設事件(最高裁 昭和55年12月18日)
転炉工場の鉄骨塗装作業中に地上31メートルから墜落即死した作業員の親族が、作業員の属していた会社と、その会社に作業を下請けさせていた会社を債務不履行もしくは不法行為に基づく賠償を請求した事件です。会社が使用を命じていた命綱を、作業者が使用していなかった重大な落ち度があったとして、第1審では賠償が否定されました。しかし、控訴審では使用者側に5割の責任があるとされました。
最高裁では、下請け会社と、元請け会社の双方に安全配慮義務違反があったと認められ、5割の限度での賠償を命じる判決がありました。
電通事件(最高裁平成12年3月24日)
電通の社員が過重労働のために健康状態が次第に悪化し、平成3年8月、上司も気付く異常な言動を示して帰宅した後、翌朝自殺したという事件です。
平成8年3月の第1審では、「常軌を逸した長時間労働」による過度の心身の疲労状態と、うつ病及びうつ病と自殺との因果関係を肯定し、上司が労働者の状態を認識しつつも具体的措置をとらなかったことに安全配慮義務不履行の過失があるとして使用者責任を認め、約1億2600万円の支払いを命じました。
この裁判は、翌平成9年東京高裁で3割減額する判決が出ましたが、さらに平成12年最高裁でこの3割減額の判断が差し戻され、結局会社が1億6800万円を遺族に支払うことで和解が成立しています。当時、マスコミで大きく取り上げられたことを覚えておいでの方も多いでしょう。
およそ危険が予測可能な場合は、万全の措置を講じる「安全配慮義務」が事業者に求められるようになってきています。ケガ・病気だけではなく、過重労働等による精神的な事故にもご注意ください。 (スマイルグループ 社会保険労務士)
事業者は労働者(公務員を含む)の生命、身体、健康の安全を保護すべき法的な義務がある、というのがいわゆる「安全配慮義務」です。メンタルヘルスの分野でも、電通の過労自殺裁判で明示されています。これに違反して労働者の生命、身体、健康の安全を損なえば損害賠償ということになります。しかも最高裁は「危険が予見可能である限りは、事業主は具体的な結果を回避する措置を講じなければならない義務」までも求めています。これは事故だけでなく病気もあてはまります。判例を見てみましょう。
大石塗装・鹿島建設事件(最高裁 昭和55年12月18日)
転炉工場の鉄骨塗装作業中に地上31メートルから墜落即死した作業員の親族が、作業員の属していた会社と、その会社に作業を下請けさせていた会社を債務不履行もしくは不法行為に基づく賠償を請求した事件です。会社が使用を命じていた命綱を、作業者が使用していなかった重大な落ち度があったとして、第1審では賠償が否定されました。しかし、控訴審では使用者側に5割の責任があるとされました。
最高裁では、下請け会社と、元請け会社の双方に安全配慮義務違反があったと認められ、5割の限度での賠償を命じる判決がありました。
電通事件(最高裁平成12年3月24日)
電通の社員が過重労働のために健康状態が次第に悪化し、平成3年8月、上司も気付く異常な言動を示して帰宅した後、翌朝自殺したという事件です。
平成8年3月の第1審では、「常軌を逸した長時間労働」による過度の心身の疲労状態と、うつ病及びうつ病と自殺との因果関係を肯定し、上司が労働者の状態を認識しつつも具体的措置をとらなかったことに安全配慮義務不履行の過失があるとして使用者責任を認め、約1億2600万円の支払いを命じました。
この裁判は、翌平成9年東京高裁で3割減額する判決が出ましたが、さらに平成12年最高裁でこの3割減額の判断が差し戻され、結局会社が1億6800万円を遺族に支払うことで和解が成立しています。当時、マスコミで大きく取り上げられたことを覚えておいでの方も多いでしょう。
およそ危険が予測可能な場合は、万全の措置を講じる「安全配慮義務」が事業者に求められるようになってきています。ケガ・病気だけではなく、過重労働等による精神的な事故にもご注意ください。 (スマイルグループ 社会保険労務士)
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