労務ニュース スマイル新聞

2015年6月23日 火曜日

平成27年6月23日第388号

限定承認について

限定承認とは、相続財産のうち積極財産(プラスの財産)と消極財産(マイナスの財産)の総額がプラスになるのかマイナスになるのかよくわからないときに「積極財産の範囲内で消極財産を相続します」という意思表示のことです。

1.限定承認の方式
(1)自己のために相続の開始したことを知ったときから3ヵ月以内に財産目録を調製して家庭裁判所に提出し、限定承認をする旨の申述をしなければなりません。(民法第924条)
(2)相続人が数人あるときは、共同相続人全員が共同してでなければ、限定承認をすることが出来ません。(民法第923条)

2.限定承認の効果
(1)債務は縮減されませんが、相続人の責任が相続によって取得した積極財産の限度に縮減されるということで、いわゆる物的有限責任を負うということになります。
(2)相続債権者や受遺者への公平な分配のため、相続財産と相続人の固有財産とは切り離され、相続財産について清算が行われることになります。よって、相続人が被相続人に対して有した権利義務は消滅しなかったものとみなされます。(民法第925条)
(3)家庭裁判所は、相続人が複数ある場合は相続財産管理人を選任しなければならず、また相続財産管理のため、相続財産管理人を選任することも出来ます。
(4)公告及び催告の後、換価を行い、定められた順序に従って弁済が行われます。売却を必要とする相続財産があるとき、原則としては競売によることになりますが、限定承認者は家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、相続財産の全部または一部の価額を弁済して、その競売を止めることが出来ます。(民法第932条但書)これを「先買権行使による競売停止」といいます。

3.限定承認者の責任
限定承認者が公告及び催告の手続を怠ったり、公告期間内に弁済する等により、他の債権者もしくは受遺者に弁済をすることが出来なくなったときは、損害を賠償する責任を負います。(民法第934条)

4.限定承認と、みなし資産譲渡所得課税制度
限定承認によって相続した資産については「相続開始の時に、相続時の価額に相当する金額により譲渡がなされたものとみなして、譲渡所得税を納めなければならない」と、されています。(所得税法第59条)なお、この場合の価格は路線価ではなく時価評価となります。

(スマイルグループ 不動産鑑定士)

投稿者 イケダ労務管理事務所

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