労務ニュース スマイル新聞
2011年9月12日 月曜日
平成23年9月8日(第297号)...パートタイマーの兼業
本来、法律で兼業が禁止されているのは公務員であり、私企業の労働者は法律による兼業が禁止されていません。その兼業を禁止するには、就業規則などの具体的定めによることとなります。
まず一般的に労働者に対し兼業を禁止できるかどうかが問題となります。今日、多くの企業は、就業規則などで兼業を禁止し、その違反を懲戒事由として定めています。しかしながら、本来、労働者は「労働契約により勤務時間中のみ労務に服することを原則とし、勤務時間外は使用者の支配下を離れ、自由であるはず」として、兼業について争われることがあります。
裁判例では、兼業禁止について無制限に認めてはいません。就業規則で兼業を全面的に禁止することは、特別な場合を除き、合理性に欠くとされています。しかしながら、「労働者が労働時間外に適度な休憩を取ることは、誠実な労務提供の為の基礎的条件であり、また、兼業の内容によっては、会社の経営秩序を害することもあり得るから、兼業禁止規定には合理性がある」(小川建設事件、東京地裁昭57.11.19)として一応合理性が認められています。
兼業禁止の就業規則が認められる合理性要件として
(1)その兼業職業が会社の職場秩序を妨害し、もしくは労務の提供に特別な支障を来
たすたぐいの兼業である場合
(2)会社の業務内容によっては、労働者の兼業により会社の対外的信用が傷つけられ
る場合
などが挙げられます。
例えば(1)について、労務提供になんら影響のない場合まで、兼業禁止違反を問うことは無理があることもあります。
勤務日数や勤務時間が少ないパートタイマーについて、一律に兼業を禁止する規定を適用することに合理的理由を求めることは、困難な場合が多いと思われます。
パートタイマーの兼業についても、兼業が、不正な競業に当たる、営業秘密の不正な使用・開示を伴う、労働者の働き過ぎにより生命・健康を害するおそれがある、その態様により使用者の社会的信用を傷つける、などの特別な事情がある場合を除き兼業禁止を命じることは困難となります。言い換えれば、前述に該当した場合、パートタイマーにも兼業を禁止することも可能です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)
投稿者 osaka-genova.co.jp