労務ニュース スマイル新聞

2010年5月 8日 土曜日

平成22年5月8日(第265号)...過労死と労災認定

長時間労働などの過重な業務に従事することにより、血管病変等が著しく増悪し、その結果、脳・心臓疾患が発症することがあります。この様な場合、過重な業務がその発症に当たって、有力な原因となったものとして、労災補償(労災認定)の対象となることがあります。また一方会社は、労働者の健康を配慮し過重労働対策を執る社会的責任を有し、万一労働者の健康が損なわれた場合、民事訴訟における損害賠償請求を提訴される可能性もあり注意が必要です。

労災の「対象疾病」
 脳血管疾患・・・・・脳内出血(脳出血)、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症
 虚血性心疾患等・・・心筋梗塞、狭心症、心停止、解離性大動脈瘤
上記疾病が「業務による明らかな過重負荷を受けたこと」により発症したこと
発症の有力な原因が仕事によることがはっきりしていることであって、医学的経験則に照らして、脳・心臓疾患の発症の基礎となる血管病変等をその自然経過を超えて著しく増悪させ得ることが客観的に認められる負荷を受けたことをいいます。

認定要件
1.発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと
異常な出来事に遭遇とは、(1)業務に関連した重大な人身事故や重大事故に直接関与し、著しい精神的負荷を受けた場合(2)事故の発生に伴って、救助活動や事故処理に携わり、著しい身体的負荷を受けた場合(3)屋外作業中、極めて暑熱な作業環境下で水分補給が著しく阻害される状態や特に温度差のある場所への頻回な出入りがある、ことなどが挙げられます。
2.発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと
評価期間は発症前おおむね1週間。特に過重な業務には、労働時間のほか、不規則な勤務、拘束時間の長い勤務、出張の多い業務、交替制勤務・深夜勤務、作業環境(温度差・騒音・時差)、精神的緊張を伴う業務などの負荷要因が検討されます。
3.発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと
発症前1ヵ月間におおむね100時間又は発症前2ヵ月ないし6ヵ月間にわたって、1ヵ月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が認められる場合は、業務と発症との関連性が強いと評価できるとされています。
月間時間外労働が80時間を超えると労基署が労災認定をする事例が増えます。また、損害賠償請求でも長時間労働は精神障害を発症するリスクが高いとされています。会社はダラダラ残業・深夜残業等をいたずらに認めるのではなく、抑制することが必要です。
(スマイルグループ 社会保険労務士)



投稿者 イケダ労務管理事務所

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